新庁舎建設のために職員の給与を5年間減額
島根県大田市は2025年2月18日、新庁舎の新築移転を計画する整備費に充てるため、4月から5年間、特別職と職員の月額給与を減額する方針を明らかにしました。市長は30~20%、副市長が15%、教育長10%、職員は主任級以上を2~7%カットし、年間約5500万円の財源確保を見込まれており、条例改正案を26日開会の市議会3月定例会に提出すると発表しました。詳しい記事は、下記にリンクを貼っておきます。
【読売新聞】
新庁舎整備のため職員らの給与を5年間減額…市長は30~20%、年間約5500万円の財源確保
市によると、職員は正規の467人中353人が対象で、部長級7%、課長級6%、課長補佐級4%、係長級3%、主任級2%とするそうです。 なお、削減した額は、公共施設総合管理基金に積み立てられ、新庁舎建設の2029~30年度に取り崩して使う予定とのことです。
市町村による公務員の給与カットは、珍しい??
人事院勧告によらず、公務員の給与を実施している市町村が全くないわけではありません。
有名な例で言いますと、深刻な財政難から、財政再建団体となり、事実上の財政破綻となった北海道夕張市などの例があると思います。
現在も、北海道夕張市のHPには、『借金時計』が掲載されており、「財政再生計画終了年月」や「夕張市の市債(借金)の残高」が表示されています。
【北海道夕張市HP】
また、北海道夕張市の深刻な財政難から実施した給与カットによる影響の記事もありましたので、参考として、下記にリンクを貼っておきます。
【日本経済新聞】
他にも、北海道夕張市に限らず、岡山県笠岡市においても給与カットの案を職員労働組合に提示し、ニュースとなりました。
【山陽新聞】
財政難で笠岡市職員の給与カット 管理職手当 ボーナス、職労に提示
給与カットにより想定される悪影響
今回の発表により、想像できる悪影響を3つあげてみたいと思います。
【悪影響①】
◎太田市職員が他の地方公共団体に転職し、人材が流出する
公務員の給与は、基本的に、人事院勧告に基づき、設定されているため、市町村による給与差は、発生しにくい仕組みとなっています。(地域手当による差は発生します。)
よって、太田市以外の市町村では、ほぼ同水準の給与保証がされていることとなります。
近年は、多くの市町村で年齢制限を緩和し、人材を確保しようとしており、現在、太田市役所で働く職員の方が、他の自治体に転職しやすい環境が整っていると思います。
他の自治体としても、給与カットを理由に転職を希望してくる現役の太田市役所職員であれば、即戦力となるため、積極的に採用すると思われます。
【悪影響②】
◎職員の新規募集に際し、太田市への応募を躊躇し、優秀な人材確保が難しくなる
上記と似たような理由となりますが、公務員を目指す方々が、「太田市は給与が低い」
「太田市は簡単に職員の給与をカットしてくる可能性がある」という考えで、太田市へのエントリーを避けることが想定されます。
【悪影響③】
◎職員のやる気が減退し、効率的な公務遂行に支障がでる
職員にとっては、給与カットされますが、今までと変わらない水準での業務量を遂行する必要がありますし、当然ではあります。しかしながら、職員の方々も感情を持つ人間ですので、市長をはじめとする上層部への不信感から、指示命令系統に支障が発生する可能性があります。
今回の職員の給与カットについて(私見)
今回、島根県大田市は、新庁舎の新築移転を計画する整備費に充てるために給与カットを議会へ提案される予定と発表されました。職員だけでなく、特別職も給与カットを表明していることは、一定評価できますが、給与カットにより捻出できる金額以上に、大田市役所に与える悪影響の方が大きいと考えています。
国の財源の活用や、既存事業の見直し、保有している公有地の売却やリース提供など、徹底的に実行されたうえで、仕方なく財源不足分を補おうと考え出された方策だと信じていますが、職員の給与カットは、簡単に手を出したくなる薬ですが、副作用もある劇薬ともなりますので、今後の動向を注視していきたいと思います。
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